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「坐骨神経痛」という言葉をお聞きになったことがある方は多いと思います。お尻や足に走る神経痛を一般的に坐骨神経痛と呼びますが、その原因として多いのが腰椎椎間板ヘルニアです。腰椎椎間板ヘルニアとは、椎間板の髄核と呼ばれる軟骨成分が飛び出し、周囲の神経を圧迫し、腰痛や足の神経痛が出現したものです。突然発症し、体の動きやくしゃみ、いきみ動作で悪化する腰痛・足の痛みやしびれが典型的な症状です。 |
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Q1.加齢と関係はありますか? (高橋)腰椎椎間板ヘルニアの患者さんの年齢層は高齢の方よりも20歳代〜40歳代が中心です。ただし、ヘルニアは椎間板の変性(年齢に伴う変化)を基盤として、椎間板の髄核と呼ばれる成分が飛び出して発症します。つまり、加齢も椎間板ヘルニアの発生の原因の1つと考えられます。 Q2.体型とヘルニアのなりやすさに関係はありますか? (高橋)腰椎椎間板ヘルニアの患者さんはBMI(体重kg÷身長m²)が高かったとのドイツからの報告があります。直接発生リスクが上がるかは不明ですが、体重を増やしすぎないことは重要だと思います。その他、腰椎椎間板ヘルニアの発生に影響を与えるものとして、喫煙、職業(ヘリコプターのパイロット、宇宙飛行士、医療従事者、全身振動の暴露など)が挙げられています。
Q3.姿勢の悪さと関係はありますか? (高橋)近年の研究で腰椎椎間板ヘルニアの患者さんはそれ以外の患者さんと比較して腰椎の前弯が小さく、胸椎の後弯が大きい(つまり腰曲がりの姿勢である)ことが指摘されていますが、ヘルニアの発生と直接関連があるかは不明です。椎間板にかかる圧力は膝を伸ばして前屈姿勢となる、椅子に座って前屈姿勢となるなどの姿勢で高くなるとされています。このような姿勢をとることで症状が悪化する可能性はあり、その姿勢を避けるようにヘルニアで治療中の患者さんには説明をしています。 Q4.運動歴の有無と関係ありますか? (高橋)現段階では、腰椎椎間板ヘルニア発生とスポーツとの関係があるとは断定できないとされています。椎間板変性に関しては、野球と水泳で多い傾向があると報告があります。 Q5.ヘルニアと診断された場合、症状が良くなるまで安静にしていた方がいいですか? (高橋)症状が改善するまで長期間安静にする必要はありません。動くことができないほどの強い痛みがある時期には安静にした方が良いこともありますが、ある程度痛みが取れてきたら、痛みを我慢できる範囲で普段通りの生活を送り、生活の質を下げないことが大切です。
Q6.注射による治療法も様々あるようですが、どのように使い分けているのか教えてください (高橋)まず、保存治療の1つとしてブロック注射が挙げられます。仙骨硬膜外ブロック、選択的神経根ブロックが主に行われます。椎間板ヘルニアは、1つの神経根が症状の原因となっていることがほとんどですので、該当する神経根もしくはその周囲に直接局所麻酔薬とステロイド剤を注入する選択的神経根ブロックを行うことが多いです。次に、治療薬として、2018年に「ヘルニコア」という注射製剤が発売されました。これは、椎間板に直接薬物を注入し、神経の圧迫を弱める方法です。保存治療を行っても症状が改善しない場合の選択肢の1つと考えています。詳細は当院のホームページをご覧ください。 (ヘルニコア)のご案内Q7.手術が必要な場合を教えてください。またその場合、どのような手術になりますか? (高橋)保存治療(薬物治療・神経ブロックなど)を行っても症状が改善しない場合や下肢の麻痺が進行する場合には手術治療が選択されることが多いです。特に、馬尾障害(両下肢の疼痛、感覚障害、運動障害、排尿障害、会陰部の感覚障害)が出現した場合には、早期の手術治療が必要となります。手術の方法は、飛び出したヘルニアを摘出し、神経の圧迫を取る「ヘルニア摘出術」が一般的です。肉眼手術・顕微鏡視下手術・内視鏡手術のいずれでも、改善度に差はないとされています。近年では内視鏡や顕微鏡下の手術が選択されることが多いです。当院では、顕微鏡下での手術を主に施行しています。 |