日々の診療において、腰痛でお困りの方が多いことを実感します。厚生労働省による国民生活基礎調査では、腰痛を自覚する人の割合は最も高く、腰痛は国民病とも言えると思います。 |
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「腰痛」と言っても、その原因は様々です。脊椎圧迫骨折などの疾患によるものが約20%で、画像検査など詳しい検査が必要となります。時に内科疾患が原因となることもあり、安静にしていても痛みが強い場合には注意が必要です。その他約80%は脊椎の周りの筋肉、関節、椎間板などが原因であり、自然に治癒することもあるため、「様子を見て良い」腰痛と言えます。 治療に関して、4週間以内の急性腰痛では、安静よりも活動を維持する方が、疼痛軽減と機能回復の点で有用です。慢性的に(3か月以上)腰痛が続く方に対しては、運動療法(体幹の筋力強化やストレッチなど)が有用であると言われています。理学療法士の指導の元、適切な運動を行うことで腰痛患者さんの機能改善に役立つことと思います。 |
「坐骨神経痛」という言葉をお聞きになったことがある方は多いと思います。お尻や足に走る神経痛を一般的に坐骨神経痛と呼びますが、その原因として多いのが腰椎椎間板ヘルニアです。腰椎椎間板ヘルニアとは、椎間板の髄核と呼ばれる軟骨成分が飛び出し、周囲の神経を圧迫し、腰痛や足の神経痛が出現したものです。突然発症し、体の動きやくしゃみ、いきみ動作で悪化する腰痛・足の痛みやしびれが典型的な症状です。 |
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症状のある椎間板ヘルニアの60%以上は自然に吸収されていき、始まる時期は3か月以内とされています。つまり、手術をしなくても症状が改善する方が多く、保存治療が基本となります。痛みに応じて薬物治療やブロック注射、運動療法(ストレッチや筋力強化訓練など)を組み合わせて行います。 保存治療を行っても改善がない場合、手術治療も選択肢となります。手術に至る患者さんは2〜5割程度と、症状の強さやヘルニアの形により幅があります。手術方法は内視鏡や顕微鏡を使用したヘルニア摘出術が一般的です。当院では顕微鏡下での手術で対応しておりますが、なるべく切開の小さい手術を心掛けています。 |
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症状や生活環境に合わせ、治療方法を選択していきますので、お困りの症状がありましたらご相談ください。 |
主な保存療法
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●安静 重労働など腰に負担をかける動作を控え、楽な姿勢をとるようにします。 |
●薬物治療 痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性消炎鎮痛薬などを 服用します。湿布や塗り薬などの外用薬を併用することもあります。
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●運動療法、物理療法 運動療法は、医師の診断内容をもとに、理学療法士・作業療法士がストレッチや体幹を鍛えるエクササイズ等を指導します。 物理療法は、温熱・電気療法等で血行を促進し、疼痛改善、筋肉の緊張をほぐす効果が期待できます。
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●コルセット コルセットにより腰を安定させ、椎間板にかかる負担を減らします。 |
●神経ブロック 薬物治療でも痛みが改善されない場合の治療法です。痛みの起こって いる神経や、その周辺に薬剤を注入して痛みを抑えます。
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椎間板内酵素注入療法
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椎間板に酵素を含んだ薬剤を直接注射して、ヘルニアによる神経の圧迫 を弱める方法です。
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手術療法
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手術によりヘルニアを取り出し、神経への圧迫を取り除きます。一週間から 10日ほどの入院が必要です。
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当院では、脊椎脊髄疾患専門医(高橋郁子医師)による、腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)を行っています。 |
Q1.腰椎椎間板ヘルニアとは? A1.椎間板から髄核が飛び出し、脊髄神経を圧迫することで、腰痛や足の痺れといった症状を起こす疾患です。重症の場合、排尿障害を引き起こす場合もあります。 |
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Q2.椎間板内酵素注入療法とは? A2.椎間板内に酵素を含んだ薬剤(ヘルニコア)を直接注射して、ヘルニアによる神経の圧迫を弱める方法です。 ヘルニコアの有効成分コンドリアーゼは、髄核の保水成分(プロテオグリカン)を分解する酵素です。コンドリアーゼによって髄核内の保水成分が分解され、水分による膨らみが適度にやわらぎます。その結果、神経への圧迫が改善し、痛みやしびれが軽減すると考えられています。 |
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■ ヘルニコアについて知っていただきたいこと |
@治療当日 日帰り入院でのご案内となります。 10時 入院 ↓ 12時 施術開始 X線透視下でヘルニアのある椎間板を確認しながら、針を刺す場所を決めます。 ↓ 16〜18時 退院 治療後はしばらく安静にし、問題がなければ帰宅できます。 |
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A治療後の日常生活の注意点 ●治療当日は入浴を控えてください。 ●治療後一週間は腰に負担をかけないように心がけてください。 ●定期的に診察を受けてください。 |
B治療に注意が必要な方 ●アレルギー体質の方 ●「腰椎不安定症」の疑いがある方 ●変形脊椎症、脊椎すべり症、脊柱管狭窄症などヘルニア以外の脊椎疾患のある方。 ●骨粗鬆症、関節リウマチのある方 ●妊娠中の方、妊娠している可能性のある方、授乳中の方 |
C投与によりアナフィラキシーの発現の可能性があります。 次のような症状がみられた場合、直ちに医療機関に連絡し、医師の診察を受けてください。 |
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Dヘルニコアの副作用 主に、一過性の腰痛や下肢痛、発疹、発熱、頭痛がみられることがあります。 |
Eヘルニコアの治療を受けた方は、再度ヘルニコアの治療を受けることができません。(アナフィラキシーの発現リスクが高くなるため) |
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腰椎椎間板ヘルニア、その他脊椎関連疾患で受診する際、この患者カードを必ずご持参いただき、担当医師にヘルニコアで治療したことがある旨をお伝えください。 |